地域交流情報


メダカセミナー 『メダカの“目”から、生物多様性を見る』
2010年10月26日


 今回のメダカセミナーは、10月に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)併催の、『生物多様性フェア フォーラム』に参加してきました。
 フォーラムは、本会議場である名古屋国際会議場と、フェスティバルゾーンの白鳥公園を挟んで南側にある名古屋学院大学名古屋キャンパス白鳥学舎にて開催されました。


【COP10周辺状況】
 本会議場は、周囲を仮囲いで覆われ、厳戒態勢となっていました。
 一方、エキスポゾーンでは国内外の企業やNGO、NPO、行政や自治体等の展示ブースが並び、堀川を挟んだフェスティバルゾーンのステージでは数多くの催し物が開かれる等、各会場ともCOP10本会議を盛り上げていました。
 メダカセミナー当日は、平日であったため人出は少なかったようですが、週末は多くの人で賑わっているとのことでした。

フェア会場1(後方は本会議場) フェア会場2(後方は本会議場)
様々な展示ブース フォーラム会場の名古屋学院大学




【COP10フォーラム:メダカセミナー】
 我がエコラボが担当するフォーラムは、名古屋学院大学の小会場1に於いて10月26日13時より15時まで開催しました。
 これまで増岡組が、生物多様性保全のためのESD(持続可能な開発のための教育)として行ってきた「メダカ交流会」を、企業の環境活動の事例として紹介させて頂きました。
 当日は、今回の主役であるエコラボメダカを、生息地の生態系サンプルと一緒にステージ中央にディスプレイしました。

 「私たちは、生物学者でもなければ、自然保護団体でもありません。環境対策は、経済的な面から成り立たなければ持続可能な開発を続ける事ができないと考え、環境をビジネスの面から捉えて活動をしています・・・」
 場内アナウンスが流れると、まず最初に私どもを知って頂くため、増岡組の紹介と弊社の環境に関わる技術の紹介から始めさせて頂きました。

【メダカの“目”から見る生物多様性】
第一部/ 〜持続可能な社会のための国際的な取組と身近な取組〜
環境問題を考える場合に、「気候変動枠組み条約」と「生物多様性条約」は両輪となります。
国際的な取組としての両条約とそれに対応する個人の活動、そして、弊社の環境技術を紹介します。
第二部/ 〜エコラボビオトープの生物多様性〜
弊社がメダカ交流会として展開している、クロメダカを象徴種としたESD(持続可能な開発のための教育)の活動を紹介します。
自社のビオトープを題材に、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性を具体的に見て、考える教材となっています。


ステージ風景 エコラボメダカと天水池の生態系




【第一部】 〜持続可能な社会のための国際的な取組と身近な取組〜 (講演の内容)
 1992年の地球サミットにおいて、「次の世代の子供達に今の地球を引き継ぐため」の持続可能な開発に向けた「リオ宣言」、そして「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」が合意されました。
 「気候変動枠組条約」に関しては、省エネやゴミ分別という個々人による身近な取組が行われていますが、「生物多様性条約」に関しては、個々人は何に取り組んだら良いでしょうか?
 第一部は、メダカを象徴種とした「生物多様性」とは何か、なぜ必要なのかを考えます。

 私たちが生物多様性保全に向けてできることは、まずメダカを知ることです。
 それは、メダカを好きになるためです。知らなければ好きになることはできません。
 メダカを好きになれば、メダカを守ります。
 メダカを守るためには、メダカの棲む池の生態系を守らないといけません。
 その池を守るためには地域の環境を、日本の環境を、世界の環境を・・・と広がり、地球規模での保全につながる事になるのです。
 本日、この席で「メダカ」について考えた事は、「生物多様性」保全の取組に一歩踏み出したという事です。

パネル説明 増岡組と環境技術の紹介




【第二部】 〜エコラボビオトープの生物多様性〜 (講演の内容)
 増岡組環境技術研究所(通称:エコラボ)は、山林の中にある企業ビオトープそのものです。
 そのビオトープと、そこに生息する生き物たちを題材に、『生態系』、『種』、『遺伝子』のレベルで生物多様性を紹介します。

 ビオトープからは、瀬戸内海国立公園の島々を望むことができます。すそ野には小規模ながら田畑があり、山林があり、その山林は国立公園と一体化しています。
 そして、里山を目指して再生した野があり、メダカの棲む天水池があります。
 この様々な景観が『生態系』の多様性であり、それらの連続性が生物多様性に相乗効果をもたらしているのです。

 ビオトープでは、33種類確認されているチョウに代表されるように、多様性に富んだ『種』が生息しています。
 日本国内のチョウは約260種類生息していると言われており、種類によって必要とする植物が異なります。そのチョウの1割以上がこの地で見られるという事は、多様な植物も生育しているという事が言えます。これらが『種』の多様性です。

 エコラボには、天水のみで維持し、完全閉鎖水域となっている池を造っています。
 この池には、本日の主役のメダカを始め、トンボ、カエル、イモリ、小型のゲンゴロウ、タイコウチ、アメンボ、マツモムシ、モノアラガイ・・・数え切れない種類の生き物が見られます。
 約5年の間に、かつてこの近辺のため池で見られた生き物たちが全て集まってきました。
 これらの生き物たちのおかげで、天水池の生態系は守られています。

 アジアには、3種のメダカの仲間がいて、亜種として4集団あります。日本の野生のメダカは北日本集団と南日本集団に大別され、生息している水域ごとに約10種のグループに細分されています。
 それらは、長年かけてその土地に合った遺伝子を作り上げてきました。これが『遺伝子』の多様性です。
 エコラボメダカはDNA分析の結果、瀬戸内タイプと東九州タイプの間に位置しており、広義の瀬戸内型であるという見解を頂きました。
 自然の中に飼育種(ヒメダカ等)や他水系からのメダカを移入(国内外来種)する事は、遺伝子の攪乱を起こして多様性を阻害する事になるのです。

メダカの生態について エコラボメダカの遺伝子系統樹


 エコラボメダカを知り、好きになり、メダカを守ろうとした時に、メダカだけを増やしても守る事はできません。
 エコラボメダカの遺伝子を尊重し、この天水池の生態系全体を保全する事が必要です。
 そして、この池を保全するためにはビオトープ全体を保全する必要があり、この地域を、日本を、世界を・・と保全の思いは地球規模に広がります。

 メダカ交流会で、子供たちに言いました。「家でCOP10のニュースを見た時は、『生物多様性の保全のために、メダカを勉強したよ』と堂々と言って下さい」と。
 「Think Globally,Act Locally」・・・地球規模で考え、足元から実践を進める事です。

 今、私たちにできる生物多様性への取組は、まずメダカを知り、そしてメダカを好きになる事です。
 その事が、次の世代の子供たちにも、この景色が引き継がれていく第一歩になると思っています。





 今回のフォーラムの模様は、後日多くの新聞に掲載され、改めて「生物多様性」への関心の高さと、反響の大きさを感じました。



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